ルモワスネはボーヌに拠点を置く大手ネゴシアンの一軒であり、古酒の名手として知られる。
前当主のローラン・ルモワスネの並外れたテイスティング能力はブルゴーニュ随一であり、ドメーヌ元詰めが一般的ではなかった時代から品質の高いワインを買い付けており、そのバックヴィンテージストックはブルゴーニュ最大級。
概要
ルモワスネ・ペール・エ・フィスは1879年にピエール・アルフレド・ルモワスネによって、ボーヌの市街に設立されました。
評価を高めたのは1975年に3代目当主として就任したローラン・ルモワスネの時代。1822年にパリに最初の店舗を構え、今では世界に500もの店舗を展開するフランス最大手のワインショップであるニコラのクルティエ(ドメーヌとネゴシアン、さらにはワイナリーとショップ、インポーターなどの仲介人)を長年務めたローランは、ブルゴーニュの多くの生産者から一目置かれるほどのテイスティング能力の持ち主で、アルマン・ルソーの前当主であるシャルル・ルソーからは「偉大なテイスター」と称賛されていたほか、マルク・コランやベルナール・モレといった一流ドメーヌからの信頼も厚い人物でした。
その当時のブルゴーニュは今より貧しく、前述の生産者のほかにも現在のトップ生産者がルモワスネにワインをバルク売りしていました。そのためルモワスネのラインナップは今考えると凄まじく、グロ家が代々受け継ぐモノポールのクロ・デ・レアや、ヴォギュエから買い付けたワインなども保有していたといいます(今でもストックしているのかは不明ですが)。
ルモワスネの地位を確かなものとしたローラン・ルモワスネですが、後継者不在のため投資家でありワインコレクターとしても名高いアメリカ人のエドワード・ミルシュテインへ2005年に経営を譲渡。副社長にはルイ・ジャドで重役であったベルナール・ルポルトが就任し、現場統括には先代から仕えるジャック・ルソー、そして醸造責任者には著名な女性醸造家であるクローディ・ジョバール(ジョゼフ・ドルーアンの醸造責任者を長年務めたロランス・ジョバールの娘であり、リュリーには自身のドメーヌを構える)を迎え入れ、万全を期したチームで現在のルモワスネは運営されています。
また副社長に就任したルポルトは、ネゴシアンとドメーヌを上手く掛け合わせた体制を理想としており、2005年の就任時にわずか2.5haほどしかなかった自社畑を約15haにまで拡大し、そこに有機栽培を採用。今までのバルクでワインを買い付け丁寧に熟成を施すことを中心としたスタイルから、確実に変わろうとしています。
栽培や醸造
ルモワスネは基本的に出来上がったワインを買い付けます。買い付けたワインは、本拠地ボーヌの巨大な地下セラーにてゆっくりと熟成させますが、ルモワスネでは熟成により発生した澱が輸送中にワインへ悪影響を及ぼすという考えから、出荷前に状態を確認し澱引きを行い、目減り分は同じワインで補填しリコルクしています。また熟成中にも20年に一度はそれぞれに澱引きを施しているようで、これらが古酒なのにルモワスネのワインには若々しさがあると思わせる理由でしょうか。
また近年は出来上がったワインではなく、契約栽培農家から買い付けたブドウを使ったワイン造りにも意欲的。農家とは、ブルゴーニュで慣例となっているブドウの重量での買い取りではなく、畑面積での契約をしています。重量での買い取りでは、時に農家が収量を優先し凝縮度の低いブドウを栽培する可能性がありますが、畑面積での契約であれば農家の収入を保証することができ、高い品質のブドウを栽培してもらいやすくなります。
自社畑についてはビオロジックでの栽培を行っています。除草剤や農薬、化学肥料を使わず健全に栽培されたブドウは手摘みで収穫され、厳しい選果にかけられます。
赤ワインではブドウを除梗した後、低温マセラシオンを施すほか、シャプタリザシオンも必要に応じて行います。オープントップの醗酵槽にて自然酵母で醗酵を行い、フレンチオークにて熟成。熟成時の新樽率はキュヴェとヴィンテージによって大きく異なり、村名30%でプルミエ・クリュ30~70%、グラン・クリュでは最大100%となっています。
白ワインは空気圧式プレス機で優しく圧縮し、自然酵母で醗酵。熟成はキュヴェとヴィンテージによって異なり、フレンチオークのほかにステンレスタンクも併用します。新樽率は村名が30%ほどでグラン・クリュの最大100%まで様々です。
所有する主な畑
Charmes-Chambertin シャルム・シャンベルタン
Clos de Vougeot クロ・ド・ヴージョ
Les Caztieres レ・カズティエ(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)
Poisseneots ポワスノ(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)
Bressandes ブレッサンド(ボーヌ・プルミエ・クリュ)
ワインのスタイル
ルモワスネのワインは、かなりの年数が経過していてもどこか若々しさを感じさせるのがある意味特徴かもしれません。酸やタンニンが完全に溶け込んだ滋味深い味わいの中に活き活きとした印象があります。
自社畑から造られた比較的若いヴィンテージのブルゴーニュも、クラシックかつエレガント。かなり昔のヴィンテージから近年のものまでいずれも秀逸です。
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