Domaine Simon Bize
ドメーヌ・シモン・ビーズ

サヴィニー・レ・ボーヌという比較的マイナーなアペラシオンに拠点を置きながら、人気を博しているドメーヌ・シモン・ビーズ。
日本出身の千砂・ビーズ女史とマリエル・グリヴォ女史の、女性2人の当主により運営されていることでも、よく知られています。

概要

ビーズ家は19世紀初めに、現在のイタリア国境沿いサヴォア地方から、ブルゴーニュのサヴィニー・レ・ボーヌに移住。
シモン・ビーズは、初代当主がワイン用ブドウ栽培と、肉屋を営んだことから、その歴史が始まった1880年設立の由緒あるドメーヌ。

2代目当主の代でも畑は順調に拡大しましたが、大きな変革がもたらされたのは、1950年に3代目となるシモン氏がドメーヌを引き継いでから。
彼はブドウ栽培のみならず、醸造家としても才能にも恵まれ、ドメーヌに近代的技術を導入したほか、戦後の経済復興もままならぬ中、ドメーヌ元詰めを決意。今までネゴシアンに卸していたものを、オリジナルのラベルで販売するようになると、ドメーヌ・シモン・ビーズのワインは、たちまち高く評価されるようになりました。

また1972年にシモン氏の息子、4代目当主のパトリック氏がドメーヌを引き継ぐと、銘醸地に新たに畑を所有し、1995年にラトリシエール・シャンベルタン、1997年にコルトン・シャルルマーニュと、赤白2つのグラン・クリュを獲得。ドメーヌの所有する畑は22haに達しました。
パトリック氏は、フランス農業銀行に勤務していた日本人女性の旧姓伊藤千砂女史と、1998年に結婚。彼女は銀行時代に培った語学力を活かし、販路を海外に広げたほか、ワイン造りについても学び、子育ての過程から興味を持ったシュタイナー教育が、農業とも結びついていることに気が付き、アンヌ・クロード・ルフレーヴ氏のビオディナミの勉強会に出席したのをきっかけに、ドメーヌにもビオディナミの導入を提言するなどして、更なる飛躍に貢献しました。

ドメーヌはとても順調に運営されていましたが、2013年10月に、パトリック氏が事故により61歳の若さで急死。ドメーヌの舵取りは千砂女史とパトリック氏の妹であり、ドメーヌ・ジャン・グリヴォに嫁いだマリエル氏に委ねられました。
こうしてシモン・ビーズは初めて女性が運営するドメーヌとなったのですが、以前から2人共ドメーヌでの仕事をしていたのと、千砂女史のたゆまぬワイン造りに対する研究熱心な姿勢から、現在はその名声を維持するだけでなく、より洗練されたワイン造りを行い、国内外の評価をより確かなものとしています。

栽培や醸造

2008年に、サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ・セルパンティエールで、ビオディナミの試験的導入を、千砂女史がパトリック氏から許可を得て実施。その当時、セルパンティエールの畑は病害に侵されており、ブドウ樹は引き抜く予定でしたが、ビオディナミを実践すると、畑の様子は徐々に変わり、ワインの品質にもすぐ変化が見られ、「2008年からワインにヴァーティカルなラインが出て、緊張感のあるワインになった」と、千砂女史は語っています。
ワイン造りは昔から変わらず、白ワイン用のブドウは酸度と熟度のバランスを見極め収穫し、ワイナリーに運び込んだ後、ただちに圧縮します。12℃に冷却し、約12時間のデブルバージュ。
小樽に移し、3~4日の間に自然に醗酵が開始すると、20~24℃の比較的安定した温度で4~6週間の間続きます。
その後ワインは、キュヴェによって9~15ヶ月の熟成を施します。この時の新樽率は15~30%と控え目で、古樽は5年目のものまで使用します。バトナージュは樽ごとの状態を見極め判断します。またマロラクティック醗酵も自然に発生し、春頃に終わります。
そして赤ワインの醸造もまた古典的。基本は100%全房醗酵だが、例外的にブドウがあまり熟さず一部を除梗した2007年や、大雨や雹の被害を受けて完全除梗を決断した2013年のような年もある。
醗酵には木桶を用い、柔らかな抽出のためピジャージュは足で行っています。白ワイン同様に自然なアルコール醗酵後、樽に移されますが、こちらもやはり新樽率は低く、全く新樽を用いないキュヴェも多数あります。マロラクティック醗酵はランダムに発生し、長い場合6月まで続くこともあります。
キュヴェによって12~15ヶ月の熟成後、清澄や濾過を行うことなく瓶詰めします。

所有する主な畑

Latriciéres-Chambertin ラトリシエール・シャンベルタン

Corton-Charlemagne コルトン・シャルルマーニュ

Aux Vergelesses オー・ヴェルジュレス(サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ)

Les Marconnets レ・マルコネ(サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ)

Aux guettes オー・ゲット(サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ)

Les Fournaux レ・フルノー(サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ)

Les Serpentieres レ・セルパンティエール(サヴィニー・レ・ボーヌ・プルミエ・クリュ)

ワインのスタイル

シモン・ビーズのワインは、どれも派手さはなく、食事に寄り添ってくれるような滋味深い味わい。
白は果実味とバランスが取れた酸とミネラルを基調としたスタイルで、赤はストラクチャーの強さとフィネスを備えており、畑ごとの個性もよく表現されています。

管理人コメント

シモン・ビーズのワインは、例外的なヴィンテージを除き、全房醗酵に由来する植物的アロマが、とても綺麗に出ており、熟成と共に深みを増す印象があります。
所有する畑も熟成向きのものが多いため、若いうちは素っ気ない印象を持たれるキュヴェもあるかもしれませんが、飲み頃を迎えたワインは、価格に対し素晴らしいパフォーマンスを見せてくれます。

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