Domaine Arnoux Lachaux
ドメーヌ・アルヌー・ラショー

栽培農家としては200年以上の歴史を誇る旧家。
「プティDRC」と称され、近年は収量を大きく落としたせいもあってか、入手困難を極めます。
ロマネ・サン・ヴィヴァンやエシェゾーを含む4つのグラン・クリュに加えて、ヴォーヌ・ロマネやニュイ・サン・ジョルジュに数多くのプルミエ・クリュを所有しており、そのラインナップは豪華絢爛。
またピノ・ファンという栽培が難しいクローンから、ワイン造りを行う数少ない生産者の一つでもあります。

概要

ドメーヌの創立は20世紀初頭ですが、現在の名声の礎を築いたのは、4代目当主であるロベール・アルヌー。
ロベールは1957年の父の死に伴い、26歳の若さでドメーヌを継承。ロベールの両親は共にヴォーヌ・ロマネ出身でいくらか畑を所有していましたが、それを拡大したのは彼です。
しかしロベールは3人の娘に恵まれたものの、跡継ぎとなる男子がいませんでした。そこで末娘のフローランスが婿をとりドメーヌを継ぐことになり、その婿こそが前当主のパスカル・ラショー。

パスカルは1987年に結婚。元々はボーヌの薬剤師でワイン造りとは無縁の家系でしたが、 結婚後にブドウ栽培とワイン造りをロベールから学びながら、ドメーヌで働くようになりました。
1993年には醸造責任者に就任、1995年にロベールが他界してからはパスカルとフローランスの二人でドメーヌを切り盛りし、名実共に5代目当主を務め、ロベールと自身の名を冠したドメーヌ・アルヌー・ラショーとしてワイン造りを行います。
パスカルの代となってからドメーヌはカーヴの拡張、醸造施設の改装、そして畑もさらに増やし、2008年にはラトリシエール・シャンベルタンをラインナップに加え、大きく発展します。

現在、ドメーヌを牽引するのはパスカルの長男であるシャルル。
2011年からドメーヌに加わった彼は、2013年には父の引退に伴い全ての作業を任されます。
シャルルは2014年に初めて飲んだルロワのワインに衝撃を受け、畑作業の厳格化や全房醗酵の導入などを行っており、実に意欲的な人物。
2018年からは収量を大きく落としており、また最新のボトリング機を用いてコルク断面の衛生度を自動判別し、 衛生度の高い面を液面側に自動的にポジショニング、これによりTCAの可能性を低減。
シャルルは未だ30代と若いのですが、既に自身のスタイルを固めつつあり、ドメーヌを更なる発展へと導いています。

また現在は、シャルル自身の名前を冠したネゴシアン事業も手掛けており、ヴォーヌ・ロマネやニュイ・サン・ジョルジュ以外のアペラシオンのワイン造りも行っています。
ネゴシアンといっても、ブドウ生産者と直接契約して区画ごとの収穫時期を決め、収穫も自身のチームが基本的に行うという、ヴィティカルチャル・ネゴースのスタイルに非常に近いもの。
ドメーヌものに非常に近い品質ですが、こちらは全てのキュヴェに全房醗酵を採用。熟成に使用する新樽の比率も極力抑えており、少量添加する酸化防止剤もボトリング時のみで、ピュアでクリーンなワインを生み出しています。

栽培や醸造

パスカルの時代から栽培はリュット・レゾネで、除草剤を使用することはなく、化学肥料も必要最低限の量を使用するのみ。またラルー・ビーズ・ルロワと親交を深めてからは、ロニャージュ(夏季剪定)を行わなくなり、代わりにトリコタージュをしています。
ロニャージュは夏季に伸びた新梢の先端を切る摘芯(果実などの芯=芽の先端を切ること)であり、これにより収量や糖度の調整に加えて、畑の風通しの悪さや伸びた枝の影が葉にかかることを解消することが目的。対してトリコタージュは、伸びていく枝先こそ糖分を生み出すのに役立っているという考えのもと、伸びた枝を編み物のように束ねる手法で、ロニャージュ同様に風通しの悪さと影の問題もなくすことができます。非常に手間のかかる作業で、畑の環境次第では行わないほうが良い場合もあるため、これを行う生産者は非常に少ないですが、ルロワやドメーヌ・ビゾなどが行っています。
2018年以降の収量は以前より厳しく制限されており、父の時代の40hl/haから25hl/haへとなりました。これはドメーヌ・ルロワの平均収量と同じで、ここでもマダムの影響が感じられます。
醸造の際、かつては完全に除梗していましたが、現在の上級キュヴェは100%全房醗酵、その他のキュヴェでも一律60%全房で醗酵。全房醗酵を行うようになったため、キュヴェゾンの期間も12~13日と、かなり短くなりました。またシャルルは機械的なピジャージュは好まず、手作業による優しいピジャージュとルモンタージュ、デレスタージュを行います。

デレスタージュとはルモンタージュの一つであり、醗酵時に果帽が浮き上がってきたら果汁のみを抜き、果皮や種子を酸化させてから数時間後に果汁を戻す手法。フリーラン収量が増加するほか、色調の安定化やフェノール化合物の穏やかな抽出、そしてタンニンが柔らかくなるといった利点があります。

新樽の比率も大きく変わっており、以前は村名20~25%でプルミエ・クリュ30~50%(畑によっては100%)、グラン・クリュは100%でしたが、近年はその比率を落としており、村名10〜15%でプルミエ・クリュ30%、そしてグランクリュでも50%。熟成期間は平均14ヶ月となっており、醸造作業同様に父のスタイルとは大きく異なります。

所有する主な畑

Latriciéres-Chambertin ラトリシエール・シャンベルタン

Clos de Vougeot クロ・ド・ヴージョ

Romanée-Saint-Vivant ロマネ・サン・ヴィヴァン

Echézeaux エシェゾー

Les Suchots レ・スショ(ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ)

Aux Reignots オー・レニョ(ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ)

Les Chaumes レ・ショーム(ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ)

Les Proces レ・プロセ(ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ)

Clos des Corvées Pagets クロ・デ・コルヴェ・パジェ(ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ)※オー・コルヴェの3つの区画の一つであり、プリューレ・ロックの所有する単独所有区画からパトリス・リオンの単独所有区画(Clos Saint Marc クロ・サン・マルク)を挟んだ区画で、アルヌー・ラショーが最大の所有者

ワインのスタイル

パスカルがワイン造りを行っていた頃は、濃密で程よいオークのニュアンスが感じられるエレガントな味わいでしたが、シャルルが醸造を取り仕切るようになってからは、よりブドウ本来の密度の高い果実味が感じられるようになり、全房醗酵による複雑性を備えたワインとなりました。

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