Domaine Dujac
ドメーヌ・デュジャック

ポンソと双璧を成す生産者でありながら、その歴史はわずか一代。
モレ・サン・ドニのみならずブルゴーニュ全域におけるスタードメーヌです。

概要

ドメーヌの創設者であるジャック・セイスはベルギー出身で、元々は父から譲り受けたパリの製菓会社を経営していました。
しかしながらワインに魅せられた彼は1966年と1967年に、ドメーヌ・ド・ラ・プス・ドールの名醸造家であったジェラール・ポテルの下で修業します。またDRC社の共同経営者でありドメーヌ・ド・ヴィレーヌ設立者のオベール・ド・ヴィレーヌやアルマン・ルソーの前当主であったシャルル・ルソー、さらにはブルゴーニュ大学で醸造を学んでいた時の同級生でありドメーヌ・ジョルジュ・ルーミエの当主であるクリストフ・ルーミエとも親交を深めます。
恵まれた環境でワイン造りを学んだ彼は製菓会社をナビスコに売却し、1968年にモレ・サン・ドニのドメーヌ・グライエを買収。自身の名前であるジャックを文字って「ドメーヌ・デュジャック(ジャックのドメーヌの意)」を設立します。
ドメーヌ設立時からのフラッグシップであるクロ・ド・ラ・ロッシュやクロ・サン・ドニをはじめ、シャルム・シャンベルタンやボンヌ・マール、エシェゾーなどの錚々たる畑を所有。2005年にはドメーヌ・ド・モンティーユと共同でドメーヌ・トマ・モワイヤールを買収したことにより、シャンベルタンとロマネ・サン・ヴィヴァンがラインナップに加わり、デュジャックはモレ・サン・ドニ屈指の生産者へと上り詰めていきます。

現在ドメーヌは、1994年からドメーヌの手伝いをしているジェレミーとアレックがそれぞれ醸造と販売を担当しており、実質的に引き継いでいます。
またジェレミーは2000年から父のサポートを受けながらネゴシアン事業である「デュジャック・フィス・エ・ペール」を開始。通常よく見かけるペール・エ・フィス(父と子の意)の表記と違いフィス・エ・ペール(子と父の意)となっているのは、息子であるジェレミーが中心となって運営されていることを意味している。またネゴシアンと言っても、畑の管理から収穫までドメーヌのスタッフが行っているため、造られるワインの品質はドメーヌものに限りなく近いです。そしてネゴシアンとドメーヌで重複するアペラシオンであっても別々に醸造から瓶詰めまで行われます。

デュジャックと言えば全房醗酵から造られる赤ワインが有名ですが、白ワインも素晴らしいです。
1985年の霜害によりモレ・サン・ドニの村名区画のピノ・ノワールが枯死した際に、シャルドネを植えて、モレ・サン・ドニ・ブランとしてリリースしたことがきっかけです。
さらにモン・リュイザン(モレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ)に0.6haの区画を入手し、ここにもシャルドネを植えて、2000年からリリースを開始しています。

栽培や醸造

1987年からリュット・レゾネ、2001年からは徐々にビオロジックに移行しており、現在はほとんどの畑でビオディナミを導入しています。
剪定を厳しく行うのはもちろん、1本のブドウ樹に残す芽の数を少なくするなどして収量は大きく制限されています。
そしてデュジャックと言えば完全無除梗の全房醗酵。これにより醗酵中の酸化が緩やかになり、果梗由来の独特な香りやタンニンが抽出されるため、ワインには複雑味が感じられます。全房醗酵は果梗がしっかりと熟していないと青臭さやえぐみが出てしまうのに加え、実以上に果梗には雑菌が付着しやすいことから一般的に難しいとされています。デュジャックは農薬に頼らないにも関わらず全房の比率が高い、それなのにワインには安定感があるということから、畑仕事の凄さがわかります。ジェレミーが醸造を担当するようになってからは、ヴィンテージにより除梗しているため、以前よりワインの色合いは濃くなり、果実味も豊かになりました。
熟成時の新樽率はグラン・クリュとプルミエ・クリュは100%ですが、使用するオークは1年乾燥させられたものを入手し、それをさらにドメーヌで2年間晒して使用しています。こうすることによってワインに過度な新樽の風味が付くことを防いでいます。

所有する主な畑

Chambertin シャンベルタン

Charmes-Chambertin シャルム・シャンベルタン

Clos de la Roche クロ・ド・ラ・ロッシュ

Clos Saint-Denis クロ・サン・ドニ

Bonnes-Mares ボンヌ・マール

Romanée-Saint-Vivant ロマネ・サン・ヴィヴァン

Echézeaux エシェゾー

Aux Combottes オー・コンボット(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)

Les Gruenchers レ・グリュアンシェール(シャンボール・ミュジニー・プルミエ・クリュ)

Monts Luisants モン・リュイザン(モレ・サン・ドニ・プルミエ・クリュ)

Les Beaux Monts レ・ボーモン(ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ)

Aux Malconsorts オー・マルコンソール(ヴォーヌ・ロマネ・プルミエ・クリュ)

ワインのスタイル

どのヴィンテージでも「デュジャックの香りがする」と揶揄されるほど個性的で、果実由来のアロマに加えて、なめし革や独特なキノコのような土っぽさ、香草などの複雑な香りが特徴的で、酒質は絹のように滑らか。

管理人コメント

デュジャックのワインに感じられる特徴的な土の香りは、田舎っぽさがなく高貴で洗練されています。これは熟成するとトリュフのような素晴らしい芳醇な香りになります。
そしてどのアペラシオンのワインも果実味が詰まっており、フィネスに富んでいます。
個人的にデュジャックのワインは、ダヴィド・デュヴァンのようにやや濃密で酸味は少し控えめ、ほどよく樽の効いたモダンなスタイルだと思っています。ただその中でもはっきりとした個性があるのが、ブルゴーニュラヴァーから愛されている理由でしょうか。
「栽培や醸造」でも解説していますが、知人のソムリエ曰くデュジャックのワインは、特徴的な香りが以前と比べて少し弱くなったそうです。また明らかに色合いが濃くなり、味わいも濃密に変化したとのことです。

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