テロワールの表現力に優れた現当主ジャン・マリー・フーリエが率いるドメーヌ。
所有する畑のうち70%以上がグラン・クリュとプルミエ・クリュであり、いずれも高樹齢という素晴らしい条件から、多くのブルゴーニュラヴァーが熱望するワインを生み出しています。
概要
ドメーヌは19世紀半ばに設立。
現当主のジャン・マリー・フーリエはボーヌのワイン農業高校を卒業後、父の仕事を手伝いながらブルゴーニュ大学の醸造講座を受講。88年に半年の間、ブルゴーニュの神様とまで称えられるアンリ・ジャイエの下で研修を受け、93年にはオレゴンに渡りジョゼフ・ドルーアンでアメリカのピノ・ノワール造りを学びました。
94年の帰国後、父のジャン・クロードが「醸造するには早いうちから、たくさん経験を積むのがいい」と50歳の若さで引退し、ジャン・マリーは23歳の若さで5代目当主となります。(ジャン・クロードは父がワイン醸造中の不慮の事故により亡くなったため、14歳でワイン造りをすることになったそうです)
そんなジャン・マリーの持つ哲学は「高度な技術に頼り自然を支配するワイン造りではなく、自然が自ら持つ力に任せた20世紀初頭のワイン造りを行う」というもので、その考えは醸造・熟成に大きく映し出されています。
ドメーヌ・フーリエを語るには、ジャン・マリー以外に畑についても触れなければいけないでしょう。
特筆すべきは樹齢の高さ。所有する畑の平均樹齢は50年を超えており、中でもクロ・サン・ジャックには1910年植樹されたものがあり、コンブ・オー・モワンヌにも樹齢100年近いものがあります。
またワイン造りに使用するのは、ブルゴーニュ・ルージュを除き全て樹齢30年以上のブドウのみという徹底ぶり。
2000年前後は中々ドメーヌのスタイルが受け入れられませんでしたが、今では入手困難とされるワインとなっています。また2011年からはジャン・マリー自身の名義でネゴシアン業をスタートし、少量生産の高品質なワインを造りだしており、躍進が止まりません。
栽培や醸造
栽培はリュット・レゾネ。
ブドウ由来のタンニンこそがピノ・ノワールの本来の姿を表現するという考えから、収穫果は完全除梗する。
低温マセラシオンは3~4日行うが極力自然の温度(朝の収穫果の温度)に任せる。
醗酵が始まるのも自然の温度に任せ、果粒が極力潰れないようにゆっくりと行う。ジャン・マリー曰く、20日ほど経過すると果皮から果汁へ成分が移行していくそう。
これらの方法により極端な抽出をすることなく、ブドウ由来のタンニンや旨味成分、香りが果汁へと浸透し、真のピノ・ノワールになるという。
熟成時の新樽率は20%に抑え18ヶ月程度行うが、冬のカーヴの温度が年々上昇しているため少しずつ期間を短くしている。さらに新しい取り組みとして、2017年からアンフォラを部分的に使用し始めています。これによりフレッシュ感とピュアさを保つことが可能となり、タンニンは丸くなるが余韻は長く、アロマも豊かになるそう。また木樽と違い空にしていてもバクテリアに汚染されない等のメリットがある。
瓶詰めは、澱引きせずノンフィルターで行う。そして特徴的なのは、ここまでの過程で亜硫酸はほとんど添加されておらず、代わりに二酸化炭素を多く残していること。一般的に長期熟成には豊富なタンニンが必要と言われるが、フーリエはこの手法によりタンニン量が少なくても熟成可能で、若いうちに飲んでもフレッシュかつシルキーなテクスチャーのワインを造ることに成功している。
所有する主な畑
Griotte-Chambertin グリオット・シャンベルタン
Clos Saint-Jacques クロ・サン・ジャック(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)
Combe aux Moines コンブ・オー・モワンヌ(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)
Cherboudes シェルボード(ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ)
ワインのスタイル
若いうちは還元的、それが抜けると赤系果実に紅茶、スパイス、下草、キノコ、タバコなどが渾然一体となった「フーリエ香」が出てくる。
味わいはフレッシュで透明感があり、シルキーなタンニンを持ち、とてもバランスがいい。
管理人コメント
フーリエのワインはどれも若いうちはかなり還元しています。そのため他の生産者であれば既に熟成のピークに達しているヴィンテージであっても、フレッシュ感がしっかりとあります。
ネゴシアンキュヴェのブルゴーニュ・ルージュであっても、多層的な「フーリエ香」が感じられます。
手掛けるワインはどれも、ジュヴレ・シャンベルタンの生産者としてはフィネスに富んでいます。果実味は肉付きが良くピュアで、フレッシュな酸味とシルキーなタンニンが心地よく、トータルバランスが素晴らしいです。
一言で表現するなら「複雑な香りがあり、味わいは力強いが優しさもある」という感じです。
ブドウと大地の力が感じられるワインを造るジュヴレ最高の生産者に数えられるでしょう。
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