ヴォーヌ・ロマネ

ヴージョとニュイ・サン・ジョルジュの間に位置するこの村は、ブルゴーニュの中で最も強い輝きを放つ産地と言っても過言ではないでしょう。華やかで官能的な香りに、肉感的でありながら素晴らしいフィネスを備えたワインは、唯一無二の存在です。
またこの地にはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(通称DRC)やエマニュエル・ルジェ、メオ・カミュゼなど、数多くのスター生産者が集まっているのも、一際高い人気を誇る理由の一つでしょう。
ヴォーヌ・ロマネのアペラシオンは、北に隣り合うフラジェ・エシェゾーも含まれ、伝説的グラン・クリュのロマネ・コンティをはじめとした8つのグラン・クリュと15のプルミエ・クリュがあります。

ヴォーヌ・ロマネの特徴

ヴォーヌ・ロマネの畑は、県道974号線のすぐ真横、標高235m前後から少し厳しい傾斜の斜面上部の標高350mほどの丘陵にまで位置しています。コンクール渓谷から開いた2つの東向きの斜面に広がる畑は、石灰岩質で痩せた土壌で、粘土や礫の割合がよく、排水性に優れていることから、素晴らしい条件が揃っていることがわかります。

産出されるワインは、華やかかつ官能的な赤系果実や赤バラの香りで、肉付きの良い果実味と滑らかなタンニンを備えた、上品でフィネス溢れるスタイルとなることが多いです。
グラン・クリュでは、豪華絢爛なものや、スケール感の大きさに加えて完璧なバランスの、まさに洗練の極致ともいえるスタイルのワインが造られています。

ヴォーヌ・ロマネの地質

地質の構成は複雑で、斜面下部から上部までバジョース階の泥灰土がみられ、コンブランシアン石灰岩(コート・ド・ニュイ地区最南部、コンブランシアンの村にちなんで名づけられた石灰岩で、大理石などに用いられる)がところどころで露出しています。斜面上部に限ってはバス階の石灰岩が露出しており、また斜面下部ではバジョース階の石灰岩と斬新世の礫岩が多くみられます。
表土はジュラ紀中部の褐色の粘土石灰岩質土壌で、ほとんど厚みがありません。村の北側の畑ではわずか10cmから1mほどで、村の東側や斜面下部ではその厚さを増し1m以上になります。また土壌には、ジュラ紀下部の石灰岩が分解されたものと、その他の崩積物、黄土もマトリックスとして含まれています。
薄い表土のすぐ下の基盤岩は、亀裂がありブドウ樹が根を深く張ることを可能にしています。
ヴォーヌ・ロマネでは、小さな断層がところどころにみられ、これが数あるグラン・クリュとプルミエ・クリュに、テロワールの多様性をもたらす要因の一つとなっていることも特徴的です。

グラン・クリュ

Romanée-Conti ロマネ・コンティ

ブルゴーニュにおいて最もよく知られている畑と言っても過言ではないこの神話的な畑では、ローマ時代からブドウ栽培が行われ、その歴史は2000年に渡るとも言われます。現在この畑を単独所有するのはDRCで、同生産者とロマネ・コンティについての歴史はこの項目では解説しきれない長さとなってしまうため、ここでは割愛させていただきます。
ロマネ・コンティは周囲もグラン・クリュで囲われており、北にリシュブール(ル・リシュブール)、西(斜面上)にコント・リジェ・ベレールのモノポールであるラ・ロマネ、東(斜面下)にロマネ・サン・ヴィヴァン、そして南にニコル・ラマルシュ(旧フランソワ・ラマルシュ)のモノポールであるラ・グランド・リューが位置しています。
わずか1.8haほどのこの畑は、グラン・クリュが並ぶ東向き斜面の中腹、標高260~275mに位置し、区画中央部を中心になだらかな窪地となっています。母岩にはプレモーの石灰岩の下部にあたる貝殻を多く含んだ石灰岩をはじめ4~5層にも地層が重なっており、そしてそれを覆う表土は60cmほどで深部には鉄を多く含んだ粘土質が非常に豊かな褐色の石灰岩質。また斜面上部は緩やかな勾配の斜面下部に対して、傾斜があり粘土の割合も低めでより浸食に弱くなっています。そのためここでは定期的に客土を行う必要があります。
要約してしまえば、ロマネ・コンティを決定づけるのは抜群の東向き斜面と薄い表土、そして複雑に重なる地層の上に畑が位置し、そこへブドウ樹が根を伸ばすことが可能となっているなどの条件でしょうか。また、ブドウ樹が地層深くまで根を伸ばしワインに一層の複雑味を与えるのには、DRCのビオディナミ農法も大きく影響しているかもしれません。
またこの畑について語っておくべきこととして、植えられているブドウ樹があります。ロマネ・コンティについても例外ではなくフォロキセラの被害をその当時受けていました。しばらくの間、DRCは接ぎ木をすることなく抵抗していましたが、1945年末に全ての株を引き抜きました。しかしこの前にロマネ・コンティの畑のブドウ樹を穂木にラ・ターシュの畑で接ぎ木し、そしてそのラ・ターシュの畑のブドウ樹を穂木に再びロマネ・コンティの畑へ接ぎ木を行う手法を取り入れました。これによってロマネ・コンティの畑のブドウ樹には、未だにコンティ侯爵時代に植えられていたブドウ樹直系の遺伝子が受け継がれているというわけです。余談ですが1952年の生産再開前、植え替え前の1945年のロマネ・コンティは遅霜の影響により収量が減り608本のみの生産だったと言われていますが、出来上がったワインはとにかく素晴らしく、愛好家の間では伝説的なヴィンテージとされています。
そしてロマネ・コンティのワインについて言及すると、壮大なスケール感がありながら比類なきバランスの良さを備え、透明感とフィネス溢れるスタイルで格別のエレガンスを誇ります。

La Tâche ラ・ターシュ

ニコル・ラマルシュ(旧フランソワ・ラマルシュ)のモノポールであるラ・グランド・リュとプルミエ・クリュの中でも一際高い人気を誇るオー・マルコンソールに挟まれた畑がラ・ターシュ。ロマネ・コンティ同様にこちらもDRCが単独所有しており、ラ・ターシュとレ・ゴーディショという2つのリュー・ディからなります。元々は1.4haほどのロマネ・コンティより小さな畑でしたが、1933年にDRC社の働きかけにより斜面上部のレ・ゴーディショを併合し、現在の6haほどの面積となっています。余談ですがこういった経緯もあり、プルミエ・クリュのレ・ゴーディショはマシャール・ド・グラモンやフォレ・ペール・エ・フィスなどしか手掛けていないにもかかわらず、ブルゴーニュに精通した愛好家の間では人気を誇る畑となっています。
ラ・ターシュに話を戻すと、畑が位置するのは標高250~300mの東向き斜面。上部はやや傾斜がありますが、下部は緩やかで粘土を多く含む分厚い表土。水捌けにも優れ、比較的温かいテロワールから造られるワインは常にロマネ・コンティより力強く、ボリュームとストラクチャーに秀でたスタイル。最良のラ・ターシュはロマネ・コンティを凌ぐとも言われます。

Richebourg リシュブール

同村のモノポールのグラン・クリュを除けば、ロマネ・サン・ヴィヴァンやグラン・エシェゾー、エシェゾー以上の評価を得ているのがリシュブールで、南にはロマネ・コンティとラ・ロマネ、下部にはロマネ・サン・ヴィヴァンが小道を挟んで位置しています。
およそ8haのこの畑も、オリジナルのリュー・ディは5haほどのレ・リシュブールで、1936年にレ・ヴァロワイユのリュー・ディもグラン・クリュとして共に認定されました。畑のほとんどは東向き斜面で30cmに満たないとても薄い表土。その中でもレ・ヴァロワイユのリュー・ディは、斜面の向きが東北東になっており、収穫もレ・リシュブールより数日遅くなることが多いです。
出来上がるワインはラ・ターシュには及ばずとも華やかで芳醇、筋肉質な果実味が特徴的で豪華絢爛、DRCが造るリシュブールはまさにこれに当てはまります。レ・リシュブールのリュー・ディはややボディに勝り、レ・ヴァロワイユから造られるものはより酸の効いた締まりのあるスタイル。畑面積の半分近くをDRCが所有し、ルロワやグロ・フレール・エ・スールが続きます。

Romanée-Saint-Vivant ロマネ・サン・ヴィヴァン

サン・ヴィヴァン修道院に由来する名を持つこの畑は、リシュブールとロマネ・コンティの下部に広がるヴォーヌ最大のグラン・クリュ。同村では最も低い場所に位置しています。
東向きの緩やかな斜面に位置するこの畑は、上部に位置するリシュブールとロマネ・コンティと比べて、表土が厚く90cmほどあり土壌に活性の石灰分が多く含まれるの特徴的。
ここで造られるワインは周辺のグラン・クリュ同様に華やかでありつつ、繊細さに秀でていると言われます。こちらも最大所有者はDRCで、ルロワやルイ・ラトゥールなどが続きます。

La Romanée ラ・ロマネ

面積わずか0.85haほどのグラン・クリュにおいて最小の畑であり、フランス最小のアペラシオンでもあります。元々6つの区画であった畑をリジェ・ベレール家が徐々に買い取り1827年にラ・ロマネとして登記、以後単独で所有されてきた歴史があり、今現在ドメーヌ・デュ・コント・リジェ・ベレールが唯一この畑からワインを手掛けていますが、以前は栽培から醸造、瓶詰めまでをメゾン・ルロワやアルベール・ビショー、ブシャール・ペール・エ・フィスなどが担っていました(ブシャール・ペール・エ・フィスのラ・ロマネは2004年までリリースされていました)。
ロマネ・コンティの斜面上、最良のプルミエ・クリュの一つであるプティ・モンの斜面下に位置するラ・ロマネは、最大で300m近くになりロマネ・コンティよりも傾斜があるほか、土壌に含まれる鉄の量や粘土質も控え目。また、ロマネ・コンティとは断層により微妙に分けられており、これらの要素が出来上がるワインのキャラクターの違いを決定づけていると考えられます。
プレモー石灰岩や白色魚卵状石灰岩の上にレンジナ土、厚みのある褐色の土壌が重なっており、表土はロマネ・コンティほどではありませんが4割弱が粘土質、石灰岩質の礫を多く含んでいます。
よくロマネ・コンティと比較される畑ですが、ワインメイキングの違いも相まってかラ・ロマネの方が貴族的。DRCのワインで顕著に現れる全房のニュアンスはなく、近年の暑いヴィンテージでも非常に華やかで清潔感のあるスタイル。

La Grande Rue ラ・グランド・リュ

北をロマネ・コンティとラ・ロマネ、ロマネ・サン・ヴィヴァン、南をラ・ターシュに挟まれた細長い畑。ニコル・ラマルシュ(旧フランソワ・ラマルシュ)がドメーヌ設立当初の1933年から単独所有しており、AOC制定当初はプルミエ・クリュであったこの畑を、先代のフランソワがINAOに働きかけ1989年に承認を獲得、1992年より正式に特級畑となりました。
北側の3つのグラン・クリュとは農道により隔てられており、ラ・ターシュに似たテロワールを有している。斜面上部は褐色の石灰岩質の薄い表土で、下部にかけてレンジナ土を含んだ深い表土となっています。
ここで造られるワインは、ラ・ターシュにも引けを取らない肉厚な果実味と、それに負けないタンニン量を備えつつ、とてもエレガンスに秀でて逸品です。

プルミエ・クリュ

プルミエ・クリュは、日当たりの良い東向きの斜面に広がっており、グラン・クリュ同様の水捌けの良さもありますが、より痩せた土壌です。
15のプルミエ・クリュのうち、12がヴォーヌ・ロマネにあり、残りはフラジェ・エシェゾーに位置しています。そのエリアは、大きく3つにわけられます。

村の北側のエリアで、よく知られたプルミエ・クリュの1つであるレ・スショは、ヴォーヌ・ロマネ側はリシュブールとロマネ・サン・ヴィヴァン、フラジェ・エシェゾー側はエシェゾーとグラン・エシェゾーに接する広い畑で、この村の優雅さと厚みを感じさせるワインが数多くの優良生産者によって生み出されています。
レ・スショの上にはオー・ブリュレがリシュブールを挟んで、かの有名なクロ・パラントゥと同じ斜面と広がっていますが、性格は少し異なり華やかさと厚みを備えたスタイルで、メオ・カミュゼやミッシェル・グロが素晴らしいワインを手掛けています。
そしてオー・ブリュレの北、フラジェ・エシェゾー側にレ・ボーモンやレ・ルージュ、アン・オルヴォーが広がっており、しなやかでキメ細かい質感をもったワインが多く産出されています。レ・ルージュとアン・オルヴォーは小さい畑で、手掛けている生産者も少ないですが、ジャン・グリヴォのレ・ルージュやシルバー・カティアールのアン・オルヴォーは人気があります。

斜面の最上部のエリアには、前述のオー・ブリュレからリシュブールを挟んだところに、アンリ・ジャイエが第二次大戦後に開墾した偉大な畑、クロ・パラントゥがあり、ジャイエの区画は甥のエマニュエル・ルジェが相続し、残りわずかな区画をメオ・カミュゼが所有しています。造られるワインは、繊細さと厚みに素晴らしいフィネスを備えており、ヴォーヌ・ロマネのプルミエ・クリュの中でも一際強い輝きを放っています。その他にも、オー・レニョやレ・プティ・モンが位置しており、かつては農道がないことによる農作業の難しさから見捨てられていましたが、今では少量ながら良質なワインが生み出されています。オーディ・フレッドのオー・レニョは手頃な価格ながら品質高く、ロベール・シリュグのレ・プティ・モンも素晴らしいです。

村の南、ニュイ・サン・ジョルジュに隣接したエリアでは、ラ・ターシュと近い土壌でグラン・クリュに比肩するオー・マルコンソールが人気を集めており、シルヴァン・カティアールやデュジャック、アラン・ユドロ・ノエラなどが非常に良質で、モンティーユもラ・ターシュに隣接した区画から傑出したワインを手掛けています。
オー・マルコンソールの下部に位置する、レ・ショームはオー・マルコンソールほどの肉感的で豪華な果実味がなくとも、より早く開き柔らかいスタイルで、ジャン・タルディやニコラ・ラマルシュほか多数の生産者が区画を所有しています。
そしてレ・ショームの下部で村名畑のオー・レアに接し、ミッシェル・グロのモノポールであるクロ・デ・レアは、ミッシェル・グロらしい豊かな果実味に滑らかな質感、素晴らしいバランスを携えた逸品。

村名畑

村名畑は、グラン・クリュとプルミエ・クリュの丘陵の上部と、プルミエ・クリュから村の南北に通る道路を挟んだ東側、そしてプルミエ・クリュのレ・ショームとクロ・デ・レアの間から南に走る大きな断層の東側のニュイ・サン・ジョルジュの畑に接するエリアにわけられます。

村の北側、レ・スショとロマネ・サン・ヴィヴァンの下部、クロ・ド・ヴージョに接する、ヴォーヌ・ロマネからフラジェ・エシェゾーにかけての区画である、オー・メジエールやバス・メジエール、レ・カルティエール、レ・ヴィオレット、レ・ミュレイユ・デュ・クロ、これらの区画は良質で、ブルーノ・クラヴリエやアラン・ユドロ・ノエラなどの一流生産者も畑を所有しています。

オー・マルコンソールの斜面上部のレ・ダモードや、ラ・ターシュの上に位置するオー・シャン・ペルドリなどからも傑出したフィネスを備えたワインが、ファブリス・ヴィゴやオーディフレッドなどの優良生産者によって造られています。

また村の南、ミッシェル・グロのモノポールであるクロ・デ・レアとニュイ・サン・ジョルジュとの境界に接するオー・レアの区画も素晴らしく、ティボー・リジェ・ベレールやアルローなどが素晴らしい芳香とミネラルを感じさせるワインを生み出しています。

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