Vougeot
ヴージョ

コート・ド・ニュイの中でも異質な存在と言えるのがヴージョ。
村の80%を、村唯一のグラン・クリュ「クロ・ド・ヴージョ」が占めており、残りのわずかな面積から、プルミエ・クリュと村名ワインが造られています。
クロ・ド・ヴージョは、コート・ド・ニュイ最大のグラン・クリュなのもあり、品質にかなりバラつきがみられ、そのスタイルも多種多様なためか、他の著名なグラン・クリュと比べると人気もあまりなく、良質なものであっても価格は抑えられています。

ここではヴージョのワインが一般的にどのような性格を持つのかについて解説していきます。また畑ごとの違いについてもテロワールの観点から解き明かしていきます。

ヴージョの特徴

ヴージョはシャンボール・ミュジニーとフラジェ・エシェゾーの境界から下部に広がる小さい村。標高は240~265mほどで、グラン・クリュのクロ・ド・ヴージョと同じです。

ほとんどの場合、この村のワインは村唯一のグラン・クリュであるクロ・ド・ヴージョを指すことが多いです。広大なクロ(囲い地のブドウ畑、またはその畑を囲う石垣)の中に多数の所有者がいるため、ワインのスタイルを一概に語るのは難しいですが、最良とされるものは果実味の肉付きの良さがありながらも、そこまで筋肉質ではなく、ヴォーヌ・ロマネやシャンボール・ミュジニーの優れた畑ほどの華やかさやフィネスこそないものの、魅惑的な香りを持った優美なタイプです。
また生産量はとても少ないですが、ミネラル豊かで良質なワインを生むプルミエ・クリュが、丘陵の上部、クロの北側にあり、リッチで個性的な香りを持つ白ワインもドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレーのモノポールから造られています。

ヴージョの地質

丘陵の西から東、つまりは上部から下部まで、バス階の石灰岩が露出しており、バジョース階の泥灰土や、県道974号線の下にあたるソーヌ断層によって生じた斬新世の泥灰土なども見られます。特に上部は、表面がレンジナ化しがちな褐色の石灰岩質土壌で、その下40~60cmの間で、白色魚卵状石灰岩が見られます。またこの土壌は平均で2割ほどの礫岩を含み、クロの下部を除き粘土は少なく、泥土がそれ以外のほとんどを構成しており、丘陵の上部から下部までの大部分に含まれています。

グラン・クリュ

Clos de Vougeot クロ・ド・ヴージョ

ワインのラベルには「クロ・ヴージョ」と「クロ・ド・ヴージョ」の2通りの表記がありますが、古くから所有する区画だということを主張する生産者が「クロ・ド・ヴージョ」と表記する場合が多いと言われています。
クロ・ド・ヴージョはブルゴーニュの縮図のようです。前述の通り広大な畑のため、クロの位置によって土壌の性質が異なり、その区画は107にも及びます。加えて83人の所有者(2019年時点)がいるため、出来上がるワインは同じ畑でも千差万別。
クロ・ド・ヴージョに限らずブルゴーニュの畑に、細分化されて数多くの生産者に所有されているものがあるのには、理由があります。これは1789年のフランス革命後に畑が国庫に没収され競売にかけられたのですが、農民の経済力のことを考え、細かい単位で畑が売られたこと、そしてナポレオン法典による相続法(子孫へ均等に財産を分割しなければならない)によって、それがさらに細分化されたことによります。
またクロ・ド・ヴージョは、クロ付きの畑で県道974号線に接していることでも有名。標高240~265m、ほぼ長方形の畑で傾斜は3~4度、斜面の上部にはシャンボールとフラジェを分かつオルヴォー渓谷があるものの、クロの存在により畑への影響はありません。畑は斜面の上部と中腹部、そして下部の区画に大きく分けられます。
上部は、白色魚卵状石灰岩と多くの細かい礫、そして4~5割の粘土を含んだ土壌で、35~40cmほどのほとんど厚みがないもの。ここで造られるワインは、クロの中で最も上質で、複雑味に富んだ気品あるものとされています。
中腹部も同様に、土壌の厚みはほとんどありませんが、1割ほど粘土を多く含み、特徴的なのは褐色の石灰岩質土壌が豊富であること。これにより、上部の繊細さと下部の力強さが合わさったスタイルのワインを造ることができます。
そして下部では、親水性泥灰岩の基盤上に1mほどの厚さの褐色土壌が広がっています。平均で3分の1以上の粘土と、3割にも及ぶ細かい粒子の泥土を含んでおり、ブドウ栽培にはかなり適した環境ですが、水捌けに大きな問題があります。これはクロに沿った県道974号線のアスファルトの層が、畑より高くに位置しており、斜面からの水の流れをせき止めてしまうためです。そのため多くの生産者は、排水のために余計な作業に追われています。しかしながらこの環境は、乾燥した年にはブドウ樹の水分欠乏を防ぐことに役立っています。粘土を多く含んだ土壌から造られるワインは、果実味に力強さがあり、上部の区画と組み合わせることで、優れたワインを生み出すことができます。
クロ・ド・ヴージョの最良の区画としては、ミュジニー・グラン・クリュとクロを挟んで接する、クロ北西の「ミュジニー」があり、グロ・フレール・エ・スールがフィネス溢れるスタイルのワインを造っています。またグラン・エシェゾー・グラン・クリュにクロを挟んで接する「グラン・モーペルテュイ」から、ミッシェル・グロやアンヌ・グロ、ジャン・マルク・ミヨなどが、複雑で奥深い味わいのワインを生み出しています。

プルミエ・クリュ

ヴージョのプルミエ・クリュはわずかに4つで、全てクロの北部に位置しています。
ミュジニー下部に位置するレ・プティ・ヴージョでは、とても気品のあるワインが造られています。また、そのリュー・ディでありベルターニャのモノポール、クロ・ド・ラ・ペリエールは、ペリエール=石切り場という名の通り、小石が豊富な土壌からリッチかつミネラルに富んだワインを生み出しています。
最も下部に位置するレ・クラは、泥灰土の上に粘土と礫が多く含まれる土壌ですが、炭酸塩を多く含むせいか、ミネラルを思わせる風味を備えたワインができます。
そしてドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレーのモノポール、ラ・ヴィーニュ・ブランシュ(別名ル・クロ・ブラン)は、レ・プティ・ヴージョとレ・クラの間に位置する畑で、ここから造られるワインは、香草と蜂蜜の香りを持った、リッチでオイリーな質感の、とても優雅なワインですが、あまり知られていません。

村名畑

5haにも満たないコート・ドール最小の村名アペラシオンの畑は、シャンボールとの境界とプルミエ・クリュの東にわずかに広がっています。
生産量があまりに少なく、味わいの傾向について言及することはできませんが、品質こそ劣るもののシャンボール的なスタイルに近い印象です。また極少量、ミネラルに富んだ白ワインも造られています。

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