ジュヴレ・シャンベルタンと双璧をなす存在がシャンボール・ミュジニーです。
グラン・クリュは2つと少ないですが、24のプルミエ・クリュがあり、中にはその域を超えるほどの素晴らしい畑があります。
この村に本拠地を置く生産者はあまり多くありませんが、テロワールが鮮明に映し出された秀逸なワインが造られています。しかしながら生産量は少なく、この村のワインの価格は特に上昇傾向にあると言えるでしょう。
ここではシャンボール・ミュジニーのワインが一般的にどのような性格を持つのかについて解説していきます。また畑ごとの違いについてもテロワールの観点から解き明かしていきます。
シャンボール・ミュジニーの特徴
モレ・サン・ドニとヴージョに挟まれたシャンボール・ミュジニーの畑は標高250~300mに位置し、縦に細長く広がっています。
シャンボール・ミュジニーのワインは、黒系果実というよりは赤系果実の香りが感じられることが多く、上品な果実味とキメの細かいテクスチャー、そして他の村から造られるワインの追従を許さない素晴らしいフィネスが特徴的でしょう。ふくよかではありませんが繊細で、洗練された美しさを持つスタイルは、コート・ドールにおいて最も「女性的」と言われます。
シャンボール・ミュジニーの地質
シャンボール・ミュジニーの畑はバジョース階のウミユリ石灰岩を基盤層とする褐色石灰岩や赤色泥土などからなり、基盤岩石が表土近くまでせまっていて、砂礫層のところどころで露出していることも珍しくありません。
特徴的なのは石灰岩からなる基盤層にかなり亀裂が入っていることで、ブドウ樹はこれをうまく利用し、基盤層に根を張っています。そしてこの結果として、ワインには特徴的なフィネスが備わります。
またワインに豊かな果実味や力強さを与える粘土の割合は、コート・ドールの他の産地に比べて少ないですが、例外としてミュジニーの北西の端に接している区画だけは粘土質が強いです。
グラン・クリュ
Musigny ミュジニー
標高260~300m、傾斜が4~8度とややきつい勾配の斜面に畑は位置し、レ・ミュジニー5.896ha、レ・プティ・ミュジニー4.1935ha、ラ・コンブ・ドルヴォー0.6128haの3つのリュー・ディから構成されています。レ・プティ・ミュジニーの区画はドメーヌ・コント・ジョルジュ・ド・ヴォギュエが全て所有しており、そのうち0.5haにはシャルドネが植えられています。ラ・コンブ・ドルヴォーはプルミエ・クリュの一部でしたが、1989年にミュジニーのリュー・ディとなりました。
最も素晴らしい畑の一つであるミュジニーはシャンボール丘陵の南に広がり、畑を占める石灰岩質の岩だらけの台地からヴージョに接しています。
畑の上部は硬い珊瑚礁からなる白色魚卵状石灰岩の土壌に広がり、低部では断層によって沈降したコンブランシアン石灰岩(コート・ド・ニュイ地区最南部、コンブランシアンの村にちなんで名づけられた石灰岩で、大理石などに用いられる)の上に広がっています。土壌は基盤層のすぐ上にあり、ほとんど厚みがない少量の粘土を含む褐色石灰岩質土壌。また傾斜のおかげで排水性に優れています。また土壌の厚みは、上部から下部になるにつれて明らかに増しており、しばしば上部への客土が必要となります。
これらの土壌は豊富な粘土微粒子を持つ古い黄土も含み、砂が少ないことも特徴。平均2割ほどの砂礫を含む崩積物が、さらにこの泥土と組み合わさって土壌を構成しています。
この畑の東向きの斜面はより日照量に恵まれており、小石が見られることから、ブドウ樹は夜間でも、暖かさを維持し、急激な温度変化を避けることができます。さらにシャンボールの谷とオルヴォー渓谷(ヴージョに通じる渓谷)の間に位置するため、夜間の冷たい風を逃れることができる最良の区画となっています。
出来上がるワインは様々な赤系果実やフローラルな花々、魅惑的なスパイスの香りを持ち、しっかりとした果実味と美しい質感の酸味、強大なミネラル、シルキーなタンニンが感じられます。力強さがありながら、繊細かつ優美であり完璧なバランスを誇ります。
そして0.5haほどの区画から一年にわずか6樽(1800本)しか造られないヴォギュエのミュジニー・ブランはコート・ドールにおいて最も強烈な白ワインと言えます。赤ワインに適した土壌から造られているこのワインは熟した果実とハーブのニュアンス、鉱物的なミネラルの香りを持ち、瑞々しく豊かな果実味と凛とした酸味、滑らかなテクスチャーを持ちます。
Bonnes-Mares ボンヌ・マール
クロ・ド・タールの南に位置し、モレ・サン・ドニとシャンボール・ミュジニーにまたがっていますが、モレ側における面積は全体の10分の1であり、その全てをルイ・ジャドが所有しています。
良質の黄土が堆積しており、粘土質石灰岩の土壌。モレ側は赤土が多く粘土の割合も高いため、出来上がるワインは濃い色合いで粘性も強く、果実味も重厚でタンニンも豊富。シャンボール側はそれほど厚くない土壌で、小石が多く白い泥灰土が多く見られ、石灰分が占める割合が大きいです。そのため造られるワインはモレ側のものと比べ、特徴的な力強さはあまりなく、シャンボール・ミュジニーの優れた畑のものほど優雅さや繊細さもありません。
プルミエ・クリュ
プルミエ・クリュの畑はモレ・サン・ドニに隣接する丘陵北部と、村の中心に当たる谷(コンブ・ド・シャンボール)から広がる扇状地部分、そしてヴージョに隣接する丘陵南部と3つにはっきりと分かれています。それぞれが地形の状況から特徴を付与されており、加えてその他の諸要素から複雑さや多層性がもたらされます。
丘陵北部のレ・フュエはボンヌ・マールのすぐ南に位置していますが、小さな断層とわずかな斜面の向きの違いからグラン・クリュからは外されており、ほとんど厚みのない石灰岩の褐色土壌が広がっています。しかしながらこの畑から造られるワインは、粘性もありますが滑らかな口当たりで、より艶やかなボンヌ・マールを思わせます。
レ・クラはレ・フュエに接する畑で、谷の入り口にかけて南向きの斜面へと、その向きを変える。土壌はより厚く粘土質も少し強いのもあり、ここで造られるワインもボンヌ・マール的。
レ・フュエの下部にはデリエール・ラ・グランジュがあり、はっきりと東を向いた斜面に植えられたブドウ樹から、硬く引き締まったワインが造られている。
またボンヌ・マール下部にはレ・サンティエやレ・ボード、レ・グリュアンシェール、レ・ラヴロットなどが広がっており、力強くストラクチャーのある、モレ的な個性が強いものが多いです。
扇状地のエリア、代表的なプルミエ・クリュの一つであるレ・シャルムは、砂礫が豊富で厚みのある褐色石灰岩質土壌で、花と赤い果実の華やかなアロマに、フィネス溢れる複雑味のあるワインが造られています。
レ・フスロットやレ・プラントから造られるワインも近い性格のフィネス豊かなスタイル。
このエリアの最北部に位置するオー・ボー・ブリュンから造られるワインも、やはり滑らかなテクスチャーではありますが、より豊かさが感じられます。
丘陵南部のワインも扇状地のものと同じ特徴を持ち合わせており、フィネスと繊細さがあります。
この村のプルミエ・クリュの中で最も評価が高いレ・ザムルーズからは、少々濃密さにかけることはあっても、良年にはミュジニーにほとんど匹敵するほどの品質の高いワインが造られており、その気品溢れる味わいはモレ側の力強いスタイルと対をなしています。
レ・シャルムとレ・ザムルーズを分けているレ・シャビオとオー・ドワからは、レ・ザムルーズには若干劣るものの、同じスタイルのワインが造られています。
村名畑
村名畑は、グラン・クリュとプルミエ・クリュの西、丘陵の上部のエリアと、これらの東から県道974号線との間に広がる丘陵の下部のエリアにわかれます。
上部ではフシェール、クリュー・ベサンなどの北向きのクリマや、石灰岩質の優勢なレ・ヴェロワーユなどで、ヴィンテージによってはやや軽やかすぎるワインになってしまうものの、通常は素晴らしいフィネスを備えたワインが生み出されています。
下部の区画では、浸食によって堆積した土壌が緻密かつ厚く重なっており、上部の区画から造られるワインのようなフィネスはなくとも、反対にしっかりとした骨格と肉付きの良い果実味を持ち合わせています。
上部と下部で、生み出されるワインのキャラクターは異なりますが、典型的なシャンボール・ミュジニーを生産するために、2つのエリアのワインはブレンドされることが多いです。
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