ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーに挟まれた産地。
ドメーヌ元詰めがあまり主流ではなかった頃、モレ・サン・ドニのワインはあまり知名度がなかったため、大手ネゴシアンによりジュヴレまたはシャンボールのラベルで販売されていました。
しかしここ30~50年ほどの間は存在感を増しており、ポンソやデュジャック等のスタードメーヌが他の生産者を牽引しています。
全体の畑面積のうち57%がグラン・クリュとプルミエ・クリュであり、小さい村の中に優れた畑が数多く見られます。また「クロ」と呼ばれる石垣で囲まれた区画が村名畑にも存在しているのは珍しく、古くからブドウ栽培が行われてきた由緒ある産地だということがわかる。
ここではモレ・サン・ドニのワインが一般的にどのような性格を持つのかについて解説していきます。また畑ごとの違いについてもテロワールの観点から解き明かしていきます。
そして各畑の主な区画所有者も記載しています。基本的に管理人のオススメするドメーヌ、ネゴシアンの順となっています。より詳しく知りたい方は生産者の名前をクリック(タップ)することによってご覧になっていただけます。
モレ・サン・ドニの特徴
ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーに挟まれたモレ・サン・ドニは典型的な大陸性気候で、畑は標高220~350mの東向きの斜面に広がっています。
モレ・サン・ドニのワインはジュヴレ・シャンベルタンと比べると、そこまで筋肉質ではなく骨格もやや弱くなります。そしてシャンボール・ミュジニーほどのフィネスはありません。
言い換えるとジュヴレよりフィネスがあり、シャンボールより厚みがあるスタイル。故にこの2つの中間的な味わいと言われています。
また 白ワインも少量ながら造られており、モン・リュイザンに植えられた古樹のアリゴテから、ポンソが手掛けるものが最も有名でしょう。
モレ・サン・ドニの地質
標高280~300mにはグラン・クリュがあり、その下にプルミエ・クリュのほとんどが位置しています。村名畑は最も冷涼な丘陵の最上部に少しとプルミエ・クリュの下部に広がっています。
モレ・サン・ドニの畑の土壌はジュヴレ側かシャンボール側かでも変わりますが(特にグラン・クリュ)、最も違いが見られるのは斜面上部と下部でしょう。
斜面上部
斜面の3分の2より上はバース階の急な斜面になっており、村の南の斜面中央部は沈降した断層があり、バース階が露出した石灰岩を含む緩やかな傾斜となっている。
グラン・クリュとほぼ全てのプルミエ・クリュがここに位置している。また最も標高の高い場所には村名畑が見られます。
斜面下部
斜面の3分の1より下はカローヴ階の泥灰土の露出が見られ、ジュヴレ側は新世代・第4紀の小石混じりの河川堆積物で覆われている。
ここに位置するのは県道974号線の東側にも広がる村名畑とレジョナル畑ですが、プルミエ・クリュの一部区画も含まれます。
グラン・クリュ
Clos de la Roche クロ・ド・ラ・ロッシュ
プルミエ・クリュのモン・リュイザンのすぐ下に位置しており、ラトリシエール・シャンベルタンとは地続きのグラン・クリュで、8つのリュー・ディからなります。
腐植土は30cmにも満たない厚さで、石灰岩質の褐色土壌の表土にわずかな礫と大きな岩塊が見られる。
クロ・ド・ラ・ロッシュはモレで最も骨格が強く、構成力が高いワインが造られる。力強く濃い色合い、複雑な香りを持つが、それらは果実の香りが主体。豊かでコクのある味わいで、モレの5つのグラン・クリュの中で最も熟成のポテンシャルが高い。
主要所有者
Clos Saint-Denis クロ・サン・ドニ
クロ・ド・ラ・ロッシュのすぐ隣に位置する。
ほとんど礫のない泥灰質土壌と褐色石灰岩、粘土などからなる畑で勾配は緩やか。
この畑から生まれるワインは常に肉厚で芳醇。クロ・ド・ラ・ロッシュと比べると繊細で丸みがあるが、同様に長期熟成によって花開くスタイル。
主要所有者
Clos des Lambrays クロ・デ・ランブレイ
1981年にグラン・クリュ昇格を果たした。小道を挟んで南のクロ・ド・タールと接する場所に位置している。
8.84haのうち8.66haをドメーヌ・デ・ランブレイが所有しているが、ドメーヌ・トプノ・メルムが斜面下部のわずか0.045haほどを所有しており、ドメーヌ・デ・ランブレイにとってはモノポール化を妨げる目の上のたん瘤のような存在となっている。
クロ・デ・ランブレイは斜面の見た目からもわかるように、3つの区画に大きく分けられ、土壌も異なるものとなっている。斜面上部はとても風通しの良い泥灰質土壌で、ワインにフィネスを与えている。斜面下部はウミユリ石灰岩と粘土質の土壌で、ワインの骨格を構成している。そして中腹部は双方の特徴が合わさった好条件に恵まれている。ドメーヌ・デ・ランブレイによれば、これらの他に砂岩や小石などもあり、コート・ドールの中でも多様なテロワールを持つ畑となっている。
ワインはクロ・ド・ラ・ロッシュやクロ・サン・ドニほどの力強さや野性味はないが、フィネスに富んだエレガントなスタイル。モノポールに近い畑というのもあり、ワインがどのような性質を持ちやすいかについては言及できない。
主要所有者
Clos de Tart クロ・ド・タール
北のクロ・デ・ランブレイと南のボンヌ・マールに挟まれた畑であり、1141年から900年近くもの間、一切の分割や譲渡がされることなく、代々受け継がれてきた歴史的な畑。
1932年からはモメサン家が長らく所有してきましたが、2017年に実業家フランソワ・ピノーが持ち株会社であるアルテミス( 1993年にシャトー・ラトゥールや2011年にシャトー・グリエを買収)を通じて買収。オーナー会社がこの畑の支配人を決めて、ワイン造りを行っているため、ラベルには畑名であるクロ・ド・タールとしか記されていません。
畑は東南東向きのバース階の緩やかな斜面に位置し、厚い堆積物に覆われています。すぐ隣のクロ・デ・ランブレイと比べると起伏がより少なく、斜面の上部にはプレモー石灰岩、中部には泥灰岩、下部にはウミユリ石灰岩が見られます。また南隣のボンヌ・マールのクリマからクロ・デ・ランブレイの上部まで続く石灰岩の岩脈が横切っており、ワインに絹のような口当たりが与えられている。
特徴的なことに、この畑のブドウ樹は斜面に対して垂直になっています。これは表面のわずかな土壌を、可能な限り自然浸食から守る目的で行われている。
この畑から造られるワインは 力強さと優雅さという相反する2つの性質をもっており、赤系果実によった香りとなることが多く、時にはシャンボール・ミュジニーのワインを思わせることがある。他のモレ・サン・ドニ・グラン・クリュ同様に長期の熟成によって、その素晴らしさを遺憾なく発揮してくれる。
主要所有者
Bonnes-Mares ボンヌ・マール
クロ・ド・タールの南に位置し、シャンボール・ミュジニーにまたがっているが、モレ・サン・ドニにおける面積は全体の10分の1であり、その全てをルイ・ジャドが所有している。
良質の黄土が堆積しており、粘土質石灰岩の土壌。モレ側は赤土が多く粘土の割合も高いため、出来上がるワインは濃い色合いで粘性も強く、果実味も重厚でタンニンも豊富。シャンボール側はそれほど厚くない土壌で、小石が多く白い泥灰土が多く見られ、石灰分が占める割合が大きい。そのため造られるワインはモレ側のものと比べ、特徴的な力強さはあまりなく、シャンボール・ミュジニーの優れた畑のものほど優雅さや繊細さもない。
主要所有者
プルミエ・クリュ
プルミエ・クリュのほとんどはグラン・クリュのすぐ下に位置していますが、クロ・ド・ラ・ロッシュとクロ・サン・ドニの真上にも素晴らしい畑がいくつか見られます。
モレ・サン・ドニにおいて最も知名度が高いであろうプルミエ・クリュであるモン・リュイザンは、モレとジュヴレの境界、クロ・ド・ラ・ロッシュの真上、標高350mに位置する畑。鉄分と粘土の少ない礫岩を含むバース階の石灰岩が露出した土壌は、ピノ・ノワールとシャルドネの双方に適しているが、この畑が有名になったのは、ポンソがアリゴテから造った白ワインによるものが大きい。
またほとんど同じ標高で南隣にはシャフォやジュナヴリエールが位置しており、ある程度の熟成に耐え得る赤ワインが造られている。
グラン・クリュの下に位置するプルミエ・クリュは、ジュヴレとの境界からシャンボールとの境界まで村名畑とほとんど平行に沿って連なっています。
クロ・ソルベやクロ・デ・ゾルムから造られるワインは凝縮感があり熟成のポテンシャルがある。オー・シャルムはより繊細で、クロ・ド・ラ・ビュシエール(ジョルジュ・ルーミエのモノポール)は肉厚でストラクチャーのある熟成向きのワインを生み出す。
村名畑
村名畑のワインには柔らかい口当たりとある程度のフィネス、量が少ないわけではないが主張のないタンニンが感じられます。グラン・クリュとプルミエ・クリュと比べると、どの畑のワインも早くから楽しむことができるのに加えて、ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーの中間的性格が表れています。
土壌については「モレ・サン・ドニの地質」の「斜面下部」にて解説した通りです。
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